「ハイツブリが飛ぶのを」

第72回文化庁芸術祭新人賞(関西公演の部[脚本:横山拓也])

普段、現実から「日常」を切り取って劇の世界を立ち上げているiakuが、本作では「九州南部で破局的なカルデラ噴火が起こった後の世界」を創作した。作品内で「鹿児島カルデラ」と呼称される破局噴火は、この数年、僕を恐怖に陥れる不安材料で、それなら虚構の世界を構成する要素として扱って、この不安を少しでも和らげようと試みた。だけど考えてみたら、阪神淡路大震災も中越地震も東日本大震災も熊本地震も、日常の中で起きた出来事のはずで、あれらの災害を今僕はどう捉えているのだろう、なぜ現実に起きた災害をモチーフにしてきちんと向き合わないのだろう、と突き付けられることになる。劇世界に逃避することなんか出来ないのに。そして、日常では、新たな恐怖が次々と現れる。それでも、何かを頼りに生きていかなきゃいけないし、その何かはさりげなく日常に存在してて、僕はいつもそれに無自覚に助けられている。ならば、そのことを書こうと思った。僕を救ってくれている「何か」への感謝。(大阪公演当日パンフレットより抜粋)

あらすじ

ハイツブリが越冬のために渡ってくる丘で、整然と建ち並ぶ仮設住宅。ようやく落ち着いてきた仮設住宅の暮らしが、今度はあの山の噴火によって壊されることになるなんて誰も想像していなかった。噴石や火山灰によって、ほとんどの人間がここを離れた。降灰で白く霞んだこの地で一人、女が待っている。彼女は、被害の小さかった建家に移動して、みんなが残していった備蓄を掻き集めて暮らしている。やることは何もない。食糧も燃料も、次の冬を越すには少な過ぎる。せめてもと、噴火の被害に遭った八人の遺体をポリバケツに入れ、屈葬のようして土に埋めた。読経の代わりに思い出の歌をうたおうとしたが、思い出せない。いろいろなことが思い出せない。そこに忽然と現れた絵描きは、彼女を退屈から救った。絵描きは、いくつもの被災地を巡り、遺族から故人の思い出を聞き出して、犠牲者たちの“見当似顔絵”を描きながら旅をしている。女は、この男に自分の絵を描いてもらいたいと思った。2017年秋のiakuの新作は、終焉を迎えようとしている人たちを、愛と文化で包む物語。


「ハイツブリが飛ぶのを」

日程・会場 
2017年10月19日(木)〜 24日(火) こまばアゴラ劇場
2017年11月2日(木)〜6日(月) ウイングフィールド

作 横山拓也

演出 上田一軒

出演
阪本麻紀(烏丸ストロークロック)
緒方晋(The Stone Age)
佐藤和駿(ドキドキぼーいず)
平林之英(sunday)

スタッフ
舞台監督:今井康平(CQ)
舞台美術:柴田隆弘
照明プラン葛西健一
照明オペ:久津美太地(Baobab)
音響プラン:星野大輔(サウンドウィーズ)
音響オペ:櫻内憧海
演出助手:鎌江文子、竹田桃子
衣装:植田昇明(kasane)
宣伝ヘアメイク:由季 & 長田浩典(iroNic ediHt DESIGN ORCHESTRA)
文芸協力:カトリヒデトシ
宣伝写真・舞台写真:堀川高志(kutowans studio)
宣伝美術・WEBデザイン:下元浩人(81 EIGHTY ONE)
制作協力(東京):佐藤美紘
宣伝:吉田プロモーション
制作:笠原希(iaku/ライトアイ)
東京公演提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
大阪公演提携:ウイングフィールド
助成:アサヒグループ芸術文化財団、芸術文化振興基金
企画・製作:iaku

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