【大阪・劇団・演劇】iaku(いあく)

「あつい胸さわぎ」

8月某日。稽古が始まる1週間前、本作の取材を受けた。それ自体は何ら不思議なことではないのだけれど、この日はなんだか質問にうまく答えられなかった。台本は後半まで書けていて、それなりに取材の準備もしていたのに、自分が描き出そうとしていることが的確に言語化できない。新作を製作する中で、そういうことはままある。普通に考えると、まずやりたい芝居のイメージが生まれて、それを人に伝えるための言葉を企画書にまとめて、台本にしていくという流れになるのだが、もちろんそれをやった上で、セリフやドラマの運びがどんどん具現化されていくと、最初に用意した言葉だけでは収まらなくなってしまうのだ。
脱稿して、稽古して、脚本会議して、改稿して、また稽古して、という繰り返しの日々に、徐々にこの作品がどういうものなのかを語るための言葉を獲得していく。
大阪製作の公演の際は演出をお願いする上田一軒さんに、本作ではドラマトゥルクを担当してもらっている(今回は東京稽古)。一軒さんとの会議では、色々と質問攻めにされる。僕がしどろもどろに回答すると、一軒さんが「そうやんな」「そういうことやんな」と同意してくれ、僕が答えられないでいたら「こういうことなんちゃう?」と、次の言葉を導こうとしてくれる。このシーンの目指すところ、この登場人物たちが何を大事にしているのか、僕が何を描き出したいのか、などなど、言語化していく作業が、執筆中から、稽古の前後、移動中も休日も、たびたび電話で行われる。(AirPods必須。無料通話アプリ万歳)
言葉にするのが難しいことでも、なんとか言語化しないと、次の思考に進めない。逆に、あまり的を射てなくても、無理繰りにでも言葉にしてしまうことで、ふいに内容の深いところに手が届くことがある。本作は特に言葉での整理が必要だった。
僕はストーリーが書きたいわけじゃない。現象の連続を描きたい。出来事に対する人の振る舞いや、振る舞え無さを表出したい。そう思って作っている。
本日はご来場ありがとうございます。最後までごゆっくりお楽しみください。
(当日パンフレットより抜粋)

あらすじ

階段しかないマンション。古い間取りの3DK。散らかったダイニング。明日も履くジーパンが脱いだ形のまま放置されている。未開封のダイレクトメール。二年前のままのアロマスティック。トーストの粉がついたマーガリン。終わらない課題。持ち帰った仕事。インクが切れたボールペン。ミシンの音がうるさい。飲みかけのペットボトルと食べかけのビスケットは捨てていいのかダメなのか。ダイレクトメールの束に、再検査のお知らせが混ざっていることにも気づかないような、だらしない娘と母の二人暮し。だけど、今、二人は恋をしている。はじめての恋と、二十年ぶりの恋。高鳴る胸が騒がしい。

写真:木村洋一

逢いにいくの、雨だけどopen

ハイツブリが飛ぶのをopen

粛々と運針open

walk in closetopen

あたしら葉桜open

車窓から、世界のopen

流れんなopen

目頭を押さえたopen

人の気も知らないでopen

仮面夫婦の鑑open

エダニクopen

これまでの記録

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